肝臓がんには、二通りあります。ひとつは肝臓自身からできる癌で、これを「原発性肝癌」と云います。もうひとつは他の臓器の癌、たとえば胃癌とか大腸癌の細胞が、門脈を通って肝臓に到達し、そこで成長する「転移性肝癌」です。
肝臓には基本となる肝細胞の他に胆道系の細胞がありますから、原発性肝癌にも二通りあります。
肝細胞癌と胆管癌で、肝炎ウイルスが原因となっている場合には、全て肝細胞癌だと断言できます。全てをひっくるめて圧倒的に多いのは肝細胞癌ですが、組織を詳しく調べないと厳密に区別することが難しい場合があります。
死亡統計では「肝癌」、肝炎ウイルスが関連している場合には「肝細胞癌」として、この二つを使い分けることにしました。
2001年に死亡した癌患者で癌が発生した臓器別の頻度を男女で比較すると、男性では肺癌と胃癌に次いで肝癌が第3位を占めます。
4位が大腸癌で5位が食道癌と続きます。女性での肝癌は胃癌、大腸癌と肺癌に次いで第4位にあり、女性に特有な癌である5位の乳癌よりも頻度が高くなっています。
年とともに肝癌が増加することが確実に予想できますので、肝癌の順位は男性でも女性でも近い将来に上がっていく筈です。
臓器以外にも、女性の癌患者は男性の癌患者と比べて、様子がずいぶん違っています。全体として10万人当たりの死亡数が男性と比べてずいぶん少ないです。
絶対数でも2001年で男性の癌死亡が10万人当たり209人、女性で103人ですから、男性が女性の二倍も多く癌で死亡しています。勿論、肝癌も男性上位でもっとこの傾向が強く、肝炎ウイルスが原因になる肝細胞癌では、男女比が3対1から4対1もあります。
2000年の男女別、年齢別の肝癌患者を比較しますと、男女とも、40代から80代のなかばまでに肝癌が集中していますが、40歳以下の若い人にも肝癌が発生します。
また、男女ともなだらかな山の形となっていますが、よく見ると、男性のピークは60~64歳にあり、女性ではもう少し高齢にあります。全体のパターンと平均年齢から、女性の肝癌は男性より5年くらい遅れて発症することが知られています。